感動したクラシック曲の演奏(ラヴェル、リスト)
8月から和声を学び始めた。
またひとつ世界を発見する喜びが溢れる日々になった。
集中力が続く空き時間のほとんどを音楽に費やす日々が続いている。
自分が美しい音楽たちを残す媒体になれると嬉しい。
この1ヶ月で最も聴いたクラシックの曲はラヴェルの「ピアノ協奏曲ト長調の第二楽章」だった。
この曲自体は昔から知っているし、良い曲だよね〜ぐらいに思っていた。
つまり、この曲の美しさを理解するにはもっと優れたピアニストが必要だったのだ。
そして、出会ってしまった……ミケランジェリに。
音色、ダイナミクス、間の取り方、美しすぎるトリル…
ここまですべての音に神経が通っている人は初めて聴いた。
もう一曲はリストの「オーベルンの谷」。
これは和声のレッスンの時に先生が弾いてくれた。
曲の美しさに自然と涙が流れた。
苦しい涙ではなく、美しさへの感嘆として溢れてきたものだった。
構成の美しさ、そして音が紡ぐ物語の崇高さ。
初めて古典小説で感動した時と同じ重厚さを感じた。
作家は人間の本質を描く表現を様々な方法で試みてきた訳だが、音楽でこの境地に達している人がいるとは思ってもいなかった。
ヘルマン・ヘッセの小説に「クヌルプ」という作品がある。
失恋をきっかけに放浪の旅に出た主人公が、出会った人々に自然や芸術の美でひと時の明かりを灯す物語だ。彼はその旅の果てに神に問う。自分の生の是非を。
リストのオーベルンの谷は、まるでクヌルプが旅の終わりを迎えようとしているような音楽だった。シラノ・ド・ベルジュラックの畳み掛ける美しい詩のようにリストは音を紡いで語りかける。それまでの人生の是非を。
この曲を美しく弾くためだけにピアノを練習してもいいと思ったぐらいに心に刻まれてしまった。この曲にもっと早く出会いたかったと何度も思った。
だが、まだ遅いという訳ではない。
この作品は誰かが受け継いでいくべき傑作だ。
エフゲニー・ケーシンの演奏も素晴らしい。
たくさんの名演奏があるが、おれにとっては先生の演奏が最高の演奏だったことは言うまでもない。
この恩は自分の演奏や作品で返していきたい。